極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

「わかったようなことを言わないで！　そんなこと、一番あなたに言われたくない！」

　真っ直ぐ私に駆け寄ってくると、振り上げられた手。殴られる――！　思わずギュッと瞼を閉じた。だけど衝撃はいつまで経ってもこなくて、恐る恐る目を開けると、振り上げられた早乙女さんの手は、村瀬さんが掴んでいた。

「え……村瀬さん？」

　突然現れた彼に、食堂内はどよめきが起きる。

　走ってきたのか村瀬さんは肩を上下させていた。そして驚き固まっている早乙女さんの手をゆっくりと離すと、すぐに村瀬さんは私の様子を心配げに窺う。

「大丈夫か？　さくら。……悪い、来るのが遅くなって」

「いいえ。あの……でも、どうしてここに？」

　混乱する私に村瀬さんは、眉尻を下げた。

「山浦さんが調理員から連絡を受けてね。急いで駆けつけたんだ」

　そう言うと村瀬さんは私を隠すように前に立ち、唖然と立ち尽くす早乙女さんに目を向けた。

「なにやってるんだよ、彩芽。……さくらになにをした？」

「誠司君……」

　彼が今、どんな表情で早乙女さんと対峙しているのか窺い知ることはできない。でも……。