極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「思うことがあるなら、俺に言えばいいだろ?」

 村瀬さんの一言に、早乙女さんは涙ながらに訴えた。

「言えるわけないじゃない! だって誠司君は私のこと、妹としか思っていないんでしょ? ……そんな人に好きだなんて言えなかったよ。幼なじみの関係が壊れるのが怖かったからっ……!」

 彼女の悲痛な想いに、ズキッと胸が痛む。

「本当はずっと言いたかった。誠司君の彼女になりたかったの。……でも誠司君は私のことなんて、まったく相手にしてくれなくて、つらくて……。それなのに突然現れたあの子に取られて悔しかったの! 私のほうが誠司君のこと、ずっと好きだったのにっ……」

 震える声で伝えられた気持ちに、食堂内は静まり返る。

 きっと村瀬さんは、早乙女さんの気持ちを知らなかったよね? どう、思っただろうか。
 彼のことを信じているけれど、早乙女さんの気持ちを聞いて心が揺れないか心配になる。

 すると村瀬さんは、早乙女さんに向かって深々と頭を下げた。

「すまなかった。彩芽の気持ちに気づけず。……ずっと傷つけていてごめん」

「やだ、謝らないで。……謝ってほしいわけじゃないの!」

 早乙女さんがそう言っても、村瀬さんは頭を下げたまま。
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