極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「驚かせてすまなかった。……彼女は大切な存在です。そして彼女のお腹の中には新しい命が宿っています。改めて正式な場で報告させてもらうまで、どうか彼女の身体を考慮し、温かく見守ってください」

 村瀬さん……。

 深々と社員に向かって頭を下げる村瀬さんに泣きそうになりながら、私もまた遅れて頭を下げた。

 不釣り合いだとか、どうしてあの子なの?とか、いくら言われたってかまわない。だって本当のことだから。

 でも私と一緒にいることで、村瀬さんが悪く言われることのほうが、自分のことを言われるよりずっとつらい。

 誠実で真っ直ぐで、こんなに素敵な人を悪者にしたくない。

 その一心で頭を下げ続けていると、ひとりから拍手が送られた。その音に顔を上げると、私たちに向かって大きく手を叩いていたのは弥生さんだった。

 すると拍手の数は増えていき、その場にいた全員から拍手が送られた。

 よかった。……本当によかった。ここにいる人たちには、村瀬さんの隣に立つことを認めてもらえたと自惚れてもいいだろうか? ……ううん、いいよね。だって拍手とともに「おめでとうございます」とお祝いの言葉を、次々ともらえているのだから。

 拍手は山浦さんが来るまで、鳴り止まなかった。
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