極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「そうか、あれからさくらは食堂の調理員に洗いざらい吐かされたのか。それは大変だったな」

 なんて言いながら、村瀬さんは笑いをこらえている。弥生さんたちに洗いざらい吐かされたところを、想像しているのだろう。

「もう、村瀬さんってば。笑い事じゃないですよ。本当、大変だったんですから」

 食堂を閉めていつものように片づけを済ませた後、みんなで昼食に入るとすぐさま問いただされた。

 食べる暇もないほど色々聞かれ、本当に事細かに出会いから現在に至るまでの説明を求められたのだ。

 ひとつひとつ話すたびに歓声が上がり、弥生さんたちは大興奮。……でも最後には、みんなから「おめでとう」と温かな言葉が贈られた。

 そこで自分の口から妊娠していること、その相手は村瀬さんだということ。そしてギリギリまで働き、できるなら出産後もここで働きたいことを伝えると、「待っているから」と言ってくれたんだ。

 その話をこうして今、一日の終わりにベッドの中で彼に伝えているところ。

 私の話を聞き、村瀬さんはそっと私を抱き寄せた。

「彩芽のこと、悪かった。……俺が出張中に起きた一件も山浦さんから聞いたよ。俺のためを思って言わないでくれたんだろ? ……つらい思いをさせてしまったな」

 彼のぬくもりに包まれながら、私は首を左右に振った。
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