極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 びっくりして聞き返してしまった。だって閉店間際とはいえ、けっこうな量が残っている。
 弁当三つにお惣菜が七パック。これはさすがに、ひとりで食べ切れる量ではない。

 並んでいる商品と村瀬さんを交互に見てしまう。

「実は明後日から二ヵ月間、仕事で中国に行くから、しばらくここの弁当も食べられなくなる」

「そう、なんですね……」

 突然の話に茫然となる。すると村瀬さんは陽気な声で言った。

「だから食い溜めしていこうと思って。明日の朝までは大丈夫だろ?」

「……はい。あ、でも大丈夫だと思いますが、一応冷蔵庫に保管してください」

「了解」

 聞かれたことに答えている間も、さっきの村瀬さんの言葉が頭の中で何度も繰り返されていく。

 うちの会社は、半年前から本格的に中国に進出している。その指揮を執っているのは村瀬さんだと弥生さんが言っていた。

 でもそっか。二ヵ月間も……。

 知り合ってから一週間以上会えないことはなかった。出張があっても数日間だけだったし、週に何度も通ってくれているから。だけどしばらく会えなくなるんだ。二ヵ月もの長い間ずっと。

 そう思うと、たまらなく寂しさに襲われる。
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