極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「無理はだめよ、さくらちゃん!」

「そうだぞ、お腹の子になにかあったら大変だ! お茶なら私が用意しよう」

 同時に言われた言葉は誠司さんと同じもので、彼と顔を見合わせ思わず笑ってしまった。

 それから誠司さんが紅茶とクッキーを用意してくれて、シンガポールの話や、お腹の中にいる子供の話で盛り上がる。

 ふたりにも胎動を感じてもらうと、お義父さんは感動して泣いてしまったほど。

 生まれてくるのを心待ちにしてくれている。それがヒシヒシと伝わってきて、私まで泣きそうになってしまった。和やかな時間が過ぎていく。

 だけどそれぞれのカップの紅茶が少なくなってきた頃、急にお義父さんは神妙な面持ちで口を開いた。

「本当はただ、息子夫婦に会いにくるためだけに帰国したいところだったが……。誠司、順調に進んでいるか?」

「……はい」

 重苦しい空気に、緊張がはしる。

 誠司さんから、まとまった休みが取れたからふたりが一時帰国されると聞いていたけれど、本当は違った? 他の理由があるの? だったらそれはなに?

 疑問が増す中、お義父さんは申し訳なさそうに私を見た。
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