極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

　やだな、寂しくて泣きそうになるとか私、どれだけ村瀬さんが好きなの？　そ、それよりも早くなにか言わないと。

　頭ではそうわかっているのに、心の中は寂しさで埋め尽くされて言葉が出てこない。

　自然と視線が下がる中、彼はそっと囁いた。

「出張から戻ったら、一番にさくらちゃんに会いに来てもいいかな？」

「――え？」

　思いがけない言葉に顔を上げると、優しく微笑む村瀬さんと目が合い、ドキッとなる。

「空港から真っ直ぐにここに来る」

　トクン、トクンと鼓動のひとつひとつが自分でもびっくりするほど大きくて、村瀬さんに伝わってそうで怖くなる。本当になにか言わなくちゃ。

　これじゃ彼の言動に心を乱されているのがバレバレだもの。

　頭をフル回転させて声を絞り出した。

「そ、そんなに村瀬さん、お父さんが作るお弁当が好きなんですか？」

「えっ？」

　だめ、絶対に勘違いしたらだめだ。彼の言葉に深い意味なんてない。だってしばらく来られないから、食い溜めするなんて言っていたんだよ？

　空港から真っ直ぐ来てくれるのは、お父さんが作ったお弁当を求めてでしょ？　決して私に会いたいからじゃない。

　そうやって何度も自分に言い聞かせていると、少しずつ胸の高鳴りも収まってきて、平静を取り戻していく。