極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「お疲れ、さくら。喉乾いたよな。なにか飲もうか」

「はい」

 飲み物を取りにカウンターに向かっていると、私たちの前に専務と五十代くらいの貫禄がある男性が立ち塞がった。

 専務と顔を合わせるのは、専務室に呼び出された日以来。瞬時にあの日の記憶が蘇る。

 あれから専務はなにも言ってこない。でもやはり私のことを認めてくれていないのだろう。その証拠に誠司さんの隣にいる私を見て、不快感を露わにした。

 すると誠司君は私を隠すように一歩前に出て、ふたりと対峙した。

「お久しぶりです、早乙女社長」

 早乙女社長って……え、早乙女さんのお父さんってことだよね?

 それを知ると、ますます緊張がはしる。

「あぁ、久しぶりだね誠司君。キミとは一度顔を合わせて、ゆっくりと話をしたいと思っていたから嬉しいよ。……うちの娘を振ってまで選んだそちらのお嬢さんとも、会って話がしたいと思っていたんだ」

 穏やかな声で言うけれど、目が合うと早乙女社長は露骨に嫌な顔を見せた。
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