極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 そう言うと誠司さんは、私の肩に腕を回し抱き寄せた。

「父は、母がいたからここまで会社を大きくすることができたとよく話してくれます。……私も同じです。彼女がそばにいてくれるなら、どんな困難も乗り越えていけます」

 誠司さん……。

 泣きたくないのに、こんな嬉しいことを言われたら無理だ。

 顔を伏せてそっと涙を拭う。

「勝次叔父さんが、いつも会社のことを考えてくれていることに感謝しています。……ですがやり方を間違えていませんか? あなたは専務という立場にいますが、あくまで最高責任者は父です。無断で新商品の開発に取りかかっていいはずがありません」

「な、にを言って……」

 専務だけではなく、なぜか早乙女社長も狼狽え出した。

 どういうこと? もしかして専務は会社に通すことなく、新商品の開発に着手しているってこと? それはまずいことだよね?

 話を聞いていた周囲の人たちも、「どういうことだ?」と困惑している。会場内の視線が一気に専務と早乙女社長に注がれていく。その時――。

「そこまでだ、勝次」

 聞き覚えのある声に、皆と同じ方向へ目を向けると、会場の隅から真っ直ぐこちらに向かって来るのはお義父さんだった。その隣にはお義母さんもいる。
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