極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「どうして兄さんがここに……? シンガポールにいるはずじゃ」

 突然現れたお義父さんに、専務は困惑した様子で後退りする。

「実は一週間ほど前から戻っていたんだ。……お前が早乙女社長と内密に進めている、新製品プロジェクトを突き止めるためにね」

 足を止めたお義父さんは、ふたりに厳しい目を向けた。

「まずは、うちの息子の可愛い嫁に対し、大勢の前で傷つけたことを謝罪してもらおうか。……誠司の言う通り、誠司の結婚で我が社の経営が揺れることなど断じてない。なにより息子の幸せは誰が決めるものでもない、息子が決めることだ。お前に口出す権利などないぞ」

 叱咤するとお義父さんは怒りを沈めるように、大きく息を吐いた。

「それと今夜は社員たちの日頃の努力が実を結び、披露する晴れやかな場だ。それをこんなかたちで台無しにして……! そのことについても、社員にしっかり謝罪してもらおう。……話は謝罪の後だ。証拠はしっかり揃えさせてもらった。私と裏でゆっくりしようじゃないか」

 お義父さんがそう言った瞬間、専務はその場に崩れ落ちた。早乙女社長もまた顔を伏せ、悔しそうに拳を握りしめる。
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