極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 それなのにお義父さんも誠司さんも、気丈に振る舞っていた。私のことまで気遣ってくれて……。

 誠司さんはすべて話し終えると、私に先にお風呂に入るよう促した。そして今は彼が入っていて、浴室からはシャワーの音が聞こえてくる。

 誠司さんはいつも優しい。私の些細な変化にも気づいてくれて、彼の存在に私はどれだけ助けられているか……。

 私も彼にとって、そんな存在になりたい。

 少しして入浴を済ませた誠司さんが出てきた。

「風呂に入るとさっぱりするな。さくら、なにか飲むか?」

 冷蔵庫の中からミネラルウォーターを二本手にとると、誠司さんは一本を私に差し出した。

「ありがとうございます」

 受け取ると彼は自分の手にあるミネラルウォーターのキャップを開け、ごくごくと喉を鳴らす。

「飲まないのか?」

「あ……いただきます」

 私もまた喉を潤おすと、誠司さんは眼下に広がる景色を眺めて歓声を上げた。

「ここからの景色、最高だな」

「……はい」

 いつもの誠司さんだ。きっと、もう専務のことには触れてほしくないのだろう。でも……。

 ペットボトルを持つ手が強まる。
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