極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 それでは私の存在意義ってなんだろう。今のままじゃただ彼に守られ、助けられているだけじゃないの?

 誠司さんのつらい気持ちも悲しい気持ちも、すべてぶつけてほしい。受け止めたい。そうやって彼を支えていきたい。

 その思いが強くなり、夜景を眺めている誠司さんの手を掴んだ。

「誠司さん、こっちに来てください」

「えっ? あ、おいさくら!?」

 手を引いて部屋の中央にあるソファへ向かう。そこに座らせると、戸惑う彼を抱きしめた。

「……さくら? どうしたんだ? 急に」

 だいぶ困惑している誠司さんに、自分の思いをぶつけた。

「私の前では無理しないでください」

「――え」

「つらいですよね? 悲しいですよね? 早乙女さんのことも、叔父である専務のことも。……そういう弱音、吐いてください。頼りないですし、話を聞くことしかできません。だけど私だって誠司さんの力になりたいんです」

「さくら……」

 助けられてばかりは嫌だから。

「もう無理しないでください。……今は私しかいないんですから」

 会社のトップに立つんだもの、弱いところを見せられないよね。でも私の前でだけでは、ありのままの誠司さんでいてほしい。

 その思いでギュッと彼を抱きしめていると、そっと誠司さんの腕が私の背中に回った。
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