極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「誰よりも先にさくらちゃんに会いたいからだよ。……だから戻ってきたら、真っ先にここに来るから」

「村瀬さん……」

 いつも自惚れたらだめ、叶わない恋なんだからと自分に言い聞かせてきたけれど……。少しは自分の望む未来が訪れるかもしれないと思ってもいいのだろうか。

 瞬きさえできず、ただジッと見つめていると、村瀬さんは表情を和らげた。

「それに昨日、約束しただろ? ふたりでどこか出かけようって。俺、さくらちゃんとデートできるのを楽しみに中国に行くんだ。今さら約束を破ることは許さないからな?」

 許さないって、どういうこと? 昨日の話は本気? 社交辞令じゃなかったの? そ、それにデートって……!

 勘違いしたらだめと重々承知していても、目の前の彼が私の心を惑わす。

「えっ……えっと……」

 テンパって口籠ってしまうと、村瀬さんは掴んでいた私の手を離す。そして次に優しく私の頭を二回撫でた。

 う、わぁ……なにこれ。ただ、頭を撫でられただけなのに胸が苦しい。

「デート、どこに行きたいか考えておいて」

 ドキドキしながらゆっくりと顔を上げると、目が合った村瀬さんは口もとを緩めた。

 優しい顔で見つめられると、とけそうになる。それなのに目を逸らすことができない。
< 30 / 308 >

この作品をシェア

pagetop