極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 セルフ式になっているため、使用済みの食器類などは各自で下げてもらえるし、汚れたテーブルも最後しっかり布巾で拭いてくれる。
 だけど食器を洗って片づけをして……と閉店後もなにかと忙しい。

 やっと一息つけるのは、十四時を過ぎてからだ。残った料理や食材で賄いを作り、みんなで遅い昼休みに入る。

「いや~、今日も無事に終わってよかった。明日は休みだから今晩はビールがおいしく飲めそうだよ」

 そう言って豪快に笑うのは、最も古株の戸川(とがわ)弥生(やよい)さんだ。十名いる調理員の平均年齢は四十五歳。その中で五十六歳と年齢的にも一番上の彼女には、入社して以来なにかとお世話になっている。

 私が入社する前にいた前任の管理栄養士は四十歳のベテラン。それなのに後任が新卒の私ときたら、まともに仕事ができるのかと警戒されて当然。

 でも弥生さんは違った。最初からフレンドリーに私を『さくらちゃん』と呼び、いろいろと教えてくれて……。
 早くに職場のみんなと打ち解けることができたのも、弥生さんのおかげだと思う。

 そんな弥生さんはムードメーカー的存在。ちょっぴりお節介なところもあり、噂話が大好きな一面もある。
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