極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

　早乙女さんほど彼に見合う女性はいないだろうし、家族ぐるみの付き合いもあるのなら、反対する人も当然いないはず。なによりお似合いだもの。

　ふと、電車の窓に映る自分の姿を見ると、苦笑いしてしまう。

　容姿も家柄も、すべてが村瀬さんに釣り合っていない。それなのに本当、どうして夢見ることができたのだろうか、村瀬さんとの未来を。

　最寄り駅に到着し、改札口を抜けるとすぐ目の前には商店街のアーケードが目に入る。

　あそこを抜けたら、きっといつものようにみんなが声をかけてくれる。それなのに元気ないところを見せちゃったら、心配をかけるだけだ。

　ただでさえ店を畳むと知ったみんなに、『大丈夫か？』と口々に聞かれ、『いつでも遊びに来い』と励ましてもらっているというのに……。

　大きく深呼吸をして、いざ商店街へ向かおうとしたその時、背後から肩をポンと叩かれた。

「キャッ!?」

　びっくりして大きな声で叫びながら振り返ると、そこには幼なじみの坂本(さかもと)大(まさる)がいた。

「まっ、大……!?」

「なんだよ、『さくら』って何度も呼んだのに返事しないから、わざと無視していたと思っていたけど、違ったのか？　だったら悪い」

「ううん、私のほうこそオーバーに驚いちゃってごめん」