極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 大は同い年ということもあり、幼い頃からいつも一緒だった。

 私の両親が弁当屋を営んでいるように、大の両親もまた代々酒屋を経営している。

 高校を卒業後そのまま家業を継ぎ、大で三代目。今ではすっかり酒屋の若大将が板についている。

「大は配達の帰り?」

「あぁ」

 基本は車だけれど、近場はこうして徒歩で配達しているようだ。

「さくらは会社の帰りだよな? 今日は残業か?」

「うん、ちょっと仕事が終わらなくて……」

 どちらからともなく歩を進め、肩を並べて商店街のアーケードへ向かう。

「引っ越し先は決まったのか?」

「うん、ぼちぼち」

 店を閉めたら売りに出す。おじいちゃんの食堂も年季が入っているから、お父さんが継ぐ際に改装する資金に当てるようだ。

 新居は商店街の不動産にお願いし、この近くで探してもらっているところ。今度の休日に何件か見て回る予定になっている。

「まだみんな信じられずにいるよ。……さくらのとこの弁当屋がなくなるなんて。俺も両親もおじさんの料理のファンだからさ」

「ありがとう。お父さんも喜ぶと思う」

 そんな話をしながら商店街を進んでいくと、いつものように魚屋の新さんをはじめ、紀夫さんや他の人たちから次々と声をかけられた。
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