極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 二ヵ月も中国に行っていたんだ。いつもの俺なら、不在時に溜まっていた仕事はさっさと片づけている。でも今はそれができそうにない。

「それは例の〝さくらちゃん〟が原因ですか? 日本に戻るなり会いに行かれましたが、会えなかったんですか?」

「会えないどころか、店自体がなくなっていたんです」

 俺の言葉を聞き、さすがの山浦さんも目を丸くさせた。

 出張から戻ったら、一番に会いに行くと伝えた。昨日、十六時に成田空港に到着した俺は、送ると言ってくれた山浦さんの申し出を断り、約束通りさくらちゃんに会いに向かったんだ。

 しかし、タクシーの中で弁当屋に電話したが、『現在使われていない』と機械的な言葉が返ってきて焦りを覚えた。

 急いで商店街の一角にある弁当屋に行くと、シャッターが閉じられていて、【長きに渡りご愛顧いただき、ありがとうございました】と紙が貼られていて愕然とした。

 二ヵ月の間に、いったいなにがあったのだろうか? そして同時に後悔した。なぜ、さくらちゃんの連絡先を聞いておかなかったのかと。

「驚きました。副社長から、今度彼女とデートをすると窺っていたので」

「あぁ、俺も本当にびっくりしたよ」
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