極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 頭を悩ませていると、頭の回転が速い山浦さんが打開策を提案してくれた。

「今は中国からお戻りになられたばかりで、仕事以外のことを考える余裕はないとお伝えしましょうか? その間に副社長は彼女の行き先を突き止め、一刻も早く射止めてしまえばいいのです。意中の相手がいると知れば、さすがの専務も無理に縁談を勧めることはないでしょう」

「なるほど……」

 感心していると、山浦さんは俺に厳しい目を向けた。

「そのためにも、まずは本日の仕事を終わらせることに集中してください。そうでないと商店街の店が閉まる時間になってしまいますよ?」

「そうですね、ちゃんと集中してやります」

 俺の返事を聞き、少しだけ山浦さんの表情が和らいだ。

「やっと出会えた運命の相手なんですよね? どうか副社長の恋が成就することを誰よりも願っております」

「……ありがとうございます」

 山浦さんには、早々にさくらちゃんの存在がバレた。まぁ、彼女に会いたいがために以前にも増して仕事に精を出し、終わればすぐに退社していたらバレるだろうけど。

 以前、酔った席で山浦さんにポロッと結婚観について漏らしたことがある。それを覚えていた彼は、結婚したいと思える相手と出会えたことを誰よりも喜んでくれたんだ。
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