極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 会議が終わったのは十二時過ぎ。副社長室に戻ると、複雑な表情で山浦さんが待ち構えていた。

 そんな彼から聞かされたのは、さくらちゃんの所在。

 俺が会議中に山浦さんは商店街に向かい、さくらちゃん家の行方を聞いて回ったそうだ。

 誰もがご両親は栃木の実家に戻ったとしか知らなかったが、さくらちゃんのことに関しては違った。

 彼女は両親とともに栃木には行かず、ひとり残って商店街の一角にあるアパートに暮らしているらしい。……そして山浦さんは、言いにくそうに彼女の現状を切り出した。

「実はですね、商店街の方々に私の名刺を渡してお話を窺ったのですが……大変驚くことに、皆さんうちの会社をよくご存じでして」

「え、どういうことですか?」

 いや、家電メーカーではそれなりに名が知れている会社だと自負している。知られていても、とくにおかしな点はない。

 ではなぜ山浦さんは、そんなに驚いたのだろうか。

 不思議に思っていると、一枚の封筒を差し出された。

「これは……?」

 渡されるがまま受け取ったものの、対応に困る。この封筒の中身はなんだろうか。

「我が社の社員である、猪狩さくらさんの情報を印刷したものです」

「……え」

 聞き間違いだろうか。山浦さん……今、『我が社の社員である』って言わなかったか?

 信じられなくてジッと見つめてしまう。
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