極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

　躊躇いがちに放たれた『私も』の言葉に、胸がギュッと締めつけられる。

　俺がさくらちゃんに本当のことを言えなかった理由と、さくらちゃんが俺に話せなかった理由は同じはず。つまりそれは、お互い『好き』とは言葉にしていないが、気持ちは通じ合っているってことだよな？

　その結論に行きつくと、複雑な思いで心を埋め尽くされていく。

　さくらちゃんなりに、俺の立場を理解し、そんな俺とは一緒になれないと思っているのかもしれない。だからはっきりと『好き』とは言ってくれないのだろう。

　そんな彼女を目の前にしたら、安易に俺も『好きだ』と言えない。たとえこの先、一緒になる未来が訪れたとして。母さんのように、父さんの知らないところで泣かせてしまうことがあるかもしれない。

　俺と一緒になったことを後悔する日がくる可能性もある。ただ、好きという気持ちだけですべてが思い描く通りに進まないことを、大人になって身をもって知った。

　だけど、せっかく出会えた彼女と、これっきりにしてもいいのか？　店がなくなってしまった以上、会う口実がない。

　きっと今、なにかアクションを起こさなければ、こうして会うことは叶わなくなるだろう。……いいのか？　それでも。さくらちゃんの気持ちと、自分の立場を考えれば、それが得策だと頭ではわかっている。だけど、やっと巡り合えた運命の人――。

　一度くらいは、好きな人と恋人同士がするような、幸せなひと時を過ごしてみたい。

　その思いは強くなり、困惑する彼女に言ってしまった。「キミとデートがしたい」と。