極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 行き先は、お互いの行きたいところに行こうと言われた。私は村瀬さんと水族館に行きたいと思っている。村瀬さんはどこに行きたいんだろう。

 でもさすがに公園で身体を動かしたいとは、言われないよね? だったら無難にスカートやワンピースがいい?

 ふと、大に相談しようと思ったけれど思い止まる。

 大の好みと村瀬さんの好みが、同じとは到底思えない。……それに最初で最後のデート。全部自分で決めたい。

 その日の夜は遅くまでどの服を着ていくか、悩んでしまった。



 そして迎えたデート当日。梅雨真っ最中の、貴重な晴れ間となった。

 五時には起きて準備を進めていたのに、気づけば待ち合わせの九時まであと十五分に迫っていた。

「嘘! もうこんな時間!?」

 急いで戸締まりを済ませ、最後に鏡の前で自分の姿を確認する。

 迷いに迷って決めたのは、膝下まであるチェックのワンピ―ス。メイクも念入りにしたし、髪もハーフアップにしてみた。

「変じゃないよね?」

 クルクル回って何度も確認してしまう。

 少しでも村瀬さんに、可愛いと思ってもらいたい。今日という日が、村瀬さんの中でずっと忘れられない日になってほしい。

「あ、時間っ……!」

 慌てて用意しておいたミュールを履き、家を出た。
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