極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「いや、違うんだ! 俺と一緒になったらって意味じゃなくて、その……ごめん」

 繋いでいない反対の手で、彼は顔を覆う。だけど当然すべて隠しきれていなくて、頬や耳は赤く染まっていた。

 わかってる、勘違いしたらダメだって。……だけど、彼のこんな姿を見せられたら、どうしても夢を抱いてしまう。

 村瀬さんが言うように、将来は広い庭がある一軒家に住んで、大型犬を飼ったら、どっちがしつけをするかで揉めちゃうような、そんな未来が訪れたらいいのに……と。

 叶わぬ願いにまた泣きそうになり、キュッと唇を噛みしめた時、急に三歳くらいの男の子が、村瀬さんの足にしがみついてきた。

「パパ?」

「えっ?」

 びっくりしてお互い顔を見合わせながら、男の子と目線を合わせるようにしゃがむ。

 すると私と村瀬さんの顔を交互に見て、男の子は目を潤ませた。

「パパとママじゃない……。うわーん! パパとママはどこ!?」

 突然泣き出した男の子。

 えっと、これは間違いなく迷子だよね? とにかくまずは、泣き止ませないと。たしか、バッグの中にいつも入れている飴があったはず。

 急いでバッグの中から、イチゴの飴を手に取り男の子の前に出した。
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