極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「僕、イチゴの飴は好き?」

 飴を目にした男の子は、ピタリと泣き止む。

「……すき」

 よかった、飴が好きで。

「どうぞ」

 包みを開けてあげると、男の子は嬉しそうにパクッと口に含んだ。

 か、可愛い……! よほど好きなようで、さっきまで泣いていたのが嘘のようにニコニコしている。その笑顔がとっても愛らしい。

「よし、じゃあパパとママを探そうか」

 そう言うと村瀬さんは、男の子をそっと抱き抱えた。そしてハンカチで男の子の目に溜まっている涙や鼻水を拭く。

「本当に?」

 村瀬さんに男の子は不安げに聞いた。

「あぁ、すぐにパパとママを見つけてあげるよ。……だからもう泣かないで」

 男の子を安心させるように、優しく背中や頭を撫でる村瀬さん。そんな彼に、男の子はギュッとしがみついた。

「さくらちゃん、悪いんだけどインフォメーションがどこにあるか探してくれる?」

「あ、はい!」

 案内図で場所を探している間に、村瀬さんは周囲に男の子の親らしき人がいないか探す。

 結局両親の姿はなく、インフォメーションに連れて行き、館内放送でアナウンスしてもらうとすぐに男の子の両親が迎えにきてくれた。
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