My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
1.クレドヴァロール
「じゃあ、行ってくる」
うん。
「帰ってきたら、また歌ってくれよな」
うん。
「じゃ、またな、華音」
――うん。またね、
「……響ちゃん」
「カノン?」
その声にハっと目を開ける。途端、眩しさに目がくらみすぐにまた瞼を閉じてしまった。
瞬きをしながらもう一度ゆっくりと開けていく。
視界に広がったのは青と白の世界。青は空。白は雲の色だ。
(――そうだ。ここは空の上で、私は今ビアンカに乗ってて……)
まだはっきりとしない頭でぼんやりと考える。
(それで、この眩しい光は、朝日……?)
そこで私は一気に覚醒する。
「朝!?」
声を上げて慌てて振り仰げばこちらを見下ろす優しい瞳があった。
「どうした、そんなにびっくりした顔をして」
いつもは目立つその赤毛も淡い光に照らされ少し薄まって見えた。
「ごめんセリーン! 結局朝まで寝ちゃった」
ずっと身体を支えてくれていたセリーンから離れ、私は謝る。
ちょっと仮眠のつもりが、結局朝まで寝てしまったのだ。しかもセリーンを背もたれにして。
「昨日は一睡もしなかったんだ。仕方がない」
それでもそう穏やかな声音で言ってくれるセリーン。
――確かに出来るだけ早く王子たちを城に送り届けるため、この2日間でビアンカから降りたのは食事時のほんの短い時間だけ。
前の夜はどうにか眠らずにいられたが、昨夜は日が落ちた途端ついうつらうつらしてしまって、セリーンが危ないから休めと言ってくれたのだ。
その言葉に甘えてちょっとだけ……と思ったのがいけなかった。
(パケム島のときといい、私寝坊し過ぎ)
軽く自己嫌悪に陥りながら改めてセリーンにお礼を言う。
「ありがとう。でも本当にごめんね、みんな我慢してるのに私だけ……」
「いや、カノンだけじゃない」
「え?」