My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
11.不安
「お前たちはここで待て」
「へ?」
扉の前で王子に言われ、アルさんがひっくり返ったような声を出した。
王子の視線は彼と、そしてセリーンに向いていて焦る。
(――わ、私だけ部屋に入るってこと!?)
「やー、でも俺は殿下の護衛ですし」
私の顔色を見てか、アルさんが言ってくれる。
「ほら、部屋の中だって完全に安全ってわけじゃ」
「そんなに時間はかからない。それに言っただろう。この人はドナの友人だ。悪いようにはしないと。だから安心しろ」
言いながら王子は扉を開けていく。
(そんなこと言われても、安心できるわけないよー!)
王子がどこまで知っているのか、何を考えているのか全くわからないのだ。
と、そのとき、セリーンが王子に言った。
「私はカノンの護衛だ。離れるわけにはいかない」
(セリーン……!)
思わず歓声を上げそうになる。
王子はそんなセリーンを見つめ思案するように眉根を寄せてから、小さく息を吐いた。
「わかった」
「え、俺は?」
「お前はここで見張っていろ」
ショックを受けたようなアルさんの目の前で無情にも扉は閉じられた。