My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
その部屋は主がいない間もきちんと掃除されていたようだった。
さすが王子様の部屋なだけあって王の間と同じくらい広く、そして調度品はどれも金をあしらってありキラキラと輝いていた。王の間は暗くてわからなかったけれど、きっとこれ以上に煌びやかで豪華だったのだろう。
それにしてもあの金の扉といい、この国にとっていかに金が重要かがわかる。
「中へ入ることは許したけど、ここからは動くなよ」
「わかった」
王子に言われ、セリーンは扉の前で頷く。
「カノン、こっちへ」
「は、はい」
言われ私は王子の後について部屋の奥へ入っていく。
……そんなに聞かれたくない話なのだろうか。
改めてごくりと喉が鳴った。
部屋の一番奥、庭園が見える窓際のソファに王子は腰かけた。
「座って」
「はい。失礼します」
その向かいのソファに私は座る。そして。
「あの、私に訊きたいことって……」
早くこの緊張から解放されたくて、私は自分から話を切り出した。
すると王子はちらりとセリーンのいる扉の方を見てから小声で言った。
「ドナのことだ」
「え?」
思わず肩の力が抜ける。
良く見ると、王子の頬はほんのりと赤く染まっていた。
「パケム島で、お前ドナと一緒に川に行っただろ? そのとき、ドナは僕のこと何か言ってたか?」
「王子のこと、ですか?」
「あぁ」
……てっきり自分のことを何か訊かれるのだと思っていた私は激しくほっとする。
(なんだ、単にドナのことが訊きたかっただけなんだ)