My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王子様という立場とその不遜な態度につい気を張ってしまっていたけれど、なんだか急に年相応の少年に見えてきた。
彼の少し緊張したような真剣な視線を受けて、私はあの時のことを思い出す。
「えっと、あのときドナ確か、王子に逢えて良かった、信じてみるって言ってました」
すると王子は驚いたように瞳を大きくしてからパっと私から視線を外し、口元を隠した。
どうやら嬉しかったみたいだ。
「そ、そうか。なら良かった。流石にあそこまで離れると聞こえないからな。ずっと気になっていたんだ。……随分、僕のことで迷っていたようだったから」
微笑ましくそれを聞いていて、「ん?」 と思う。
ドナがあの時迷っていたのは事実だ。あの夜、彼女は私とセリーンの前でその気持ちを吐露してくれた。
でも、その場に王子はいなかった。それに――。
「あ、あの、あそこまで離れるとって……?」
訊くと王子は瞬間しまったという顔をした。
でもすぐに諦めたように息を吐いてこちらに顔を近付けてきた。
「実はな……獣の姿になると、耳も獣並になるんだ」
「え」
顔が引きつる。
王子は私から離れると念を押すように強く言った。
「内緒だぞ、ドナにもだ」
(――ちょ、ちょっと待って。ってことは、ってことは……!)
私は恐る恐る引きつった笑顔で訊いてみる。
「あの、じゃあもしかして、ツリーハウスの中の会話とかは……」
「あぁ。あのくらいの距離ならわけない。ほぼ筒抜けだ」
得意気に言われ、サーっと顔が青くなる。
そんな私に気付いてか、王子は少し意地悪そうに唇の端を上げて追い打ちをかけるように言った。
「お前の世界の話はとても興味深かったぞ」