My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
愛する人に、自分と同じ苦しみを味あわせることになる。
きっと王子の気持ちは複雑だろう。
「でも、お前がいつも近くにいればドナも心強いと思う。それに、いざというときお前ならドナを守れる」
「守る?」
「あぁ。なんせお前は伝説の銀のセイレーンだ。ドナにはお前。そして僕にはあのストレッタの術士がいる。そうなれば、怖いものは何もない」
そのちょっと興奮したような言い方に、焦る。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
大きな声が出てしまって、慌てて音量を落として続ける。
「あの、私全然そんな、ドナを守れるような力持ってないです!」
「……謙遜か? 歌の術が使えるじゃないか」
「使えはしますけど、全然、人を守れるようなものじゃ」
「でもあのときモリスを眠らせたじゃないか。なら、やってきた敵を眠らすことだって出来るはずだ」
「それは……」
言葉に詰まる。
なんて言ったらわかってもらえるだろう。
確かにセイレーンとしての力はあるけれど、だからといって、王子の言う“いざというとき”役に立つかと言われたらはっきりとノーだ。私にそんなときの対応力なんて無い。
と、王子がソファから立ち上がった。
「まぁ、あくまでお前が帰れなかったときの話だ。でも覚えておいてくれ」
私はそんな王子に、曖昧な表情しか返せなかった。
――あくまで帰れなかった場合の話。
(私は帰るんだから。だから……)
ぎゅっと握った自分の手のひらが冷たかった。