My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


「終わったんですか?」

 王子が扉を開けるとすぐにアルさんの声が聞こえた。

「あぁ。さて、どうする。そろそろ昼食が運ばれてくる頃だが、先にお前と話したいという医師の元へ行くか?」
「え、殿下も一緒に来てくださるんですか?」
「僕も一度医師たちに挨拶しておきたいからな」
「そうですか。ならお願いします」

 そんな会話が耳に入ってくる。

「カノン?」
「え?」

 セリーンと目が合う。

「どうした? 顔色が悪いぞ」

 小声で言われ、私は慌てて首を振る。

「ううん、なんでもないよ」

 今この場では話せない。

 ――それに。この不安を口にしても、きっとセリーンを困らせるだけだ。
 どうしようもないことなのだから。



 王子たちの後について、再び王の間へと続く廊下へ戻ってきた私たち。
 最初に通された控えの間の前で、セリーンが足を止めた。

「私たちは居ても仕方ないだろう。ここで待っていよう」

 ――え?

 私は彼女を見上げる。
 もう一度フォルゲンさんに会うのなら私も一緒に、そう思ったのだけれど。

「医師の名はフォルゲンと、その奥方のリトゥースだ」 
「そっか、わかった。話が済んだら声掛けっから」

 アルさんがすんなりOKして、王子と共に先へ向かう。
 それを見送っていると、セリーンの手が肩に置かれた。

「ほら、入るぞ」
「う、うん」
< 107 / 330 >

この作品をシェア

pagetop