My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 扉が閉まってすぐにもう一度セリーンに尋ねられた。

「本当に大丈夫なのか? 王子に何か無理な頼み事でもされたか?」

 そこで気付く。セリーンは私を気遣ってここで待っていると言ってくれたのだ。

 セリーンは優しい。
 先ほどのラグのことと言い、私はそんな彼女に心配をかけてばかりいる。
 しかもその優しさに甘えっぱなしだ。

 ――セリーンとだって、いつまで一緒にいられるかわからないのに……。

「ううん、大丈夫。流石に緊張しちゃって、どっと疲れちゃった」

 胸の辺りを摩りながら苦笑して私は奥のソファへ向かう。

「あ、そうだ。王子ね、考え直してくれるって!」

 そうだ。答えの出ないことをうじうじと悩んでいても仕方ない。
 王子が考え直すと言ってくれのだ。これは大きな前進で、喜ぶべきことだ。

「本当か?」
「うん! まぁ、考え直すだけだとは言ってたけど、きっと、王妃様に渡してくれると思う」
「そうか。だといいな」

 笑顔で頷き、私はソファに座る。
 セリーンが向かいに座ったのを確認して私は小声で続けた。

「実はね、ちょっとずるいかなとも思ったんだけど、ドナの名前を出したの。そしたら!」
「そうだったのか」
「やっぱり、王子にはドナの名前が一番効くね」

 クスクス笑いながら言う。

「本当にドナのことが好きなんだなーって」
「それだけか?」
「え……」

 向けられた真剣な眼差しに気付く。

「私たちには話せないか?」

 その温かな声音に笑顔が崩れそうになる。
 今崩れたら、きっとぐちゃぐちゃになってしまう。全部吐き出してしまう。
 そしてまた甘えてしまう。

 奥歯をぐっと噛んで、頬を上げて、私は言った。

「本当に大丈夫。ありがとう、セリーン」
「そうか……」

 彼女は微笑み、それ以上は訊いてこなかった。
 そんな優しさがまた、今はありがたかった。

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