My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
12.デュックス王子
「すっかり冷めちゃったね」
手つかずの料理を見て溜め息をつく。
折角の豪華な料理もこれでは台無しだ。作ってくれた人たちに申し訳ない。
忙しそうな厨房の様子を思い出して、もう一度溜め息が漏れる。
「あっちに持っていってもられば良かったね。……あ、でも普通の人は入れないんだっけ」
「放っておけ。子供じゃないんだ、腹が減れば戻ってくるだろう」
セリーンが冷たく言う。
「そう、だよね」
返事をしながらも、なんだか落ち着かない。
(もしかして、私がさっきあんなこと言ったから、戻って来られないとか……)
でもああして飛びだしてきてしまった手前、自ら持っていくことも出来ない。
と、そんなときにドアがノックされドキリとする。
瞬間ラグかと思ったが、彼ならノックなんてしないだろう。
「はい」
「デイヴィスはいるか?」
扉を開けたのは、デュックス王子様だった。
その後ろにはフィグラリースさんの姿も見えて慌ててソファから立ち上がる。
「あ、先生ならツェリウス殿下のお部屋に」
「兄さまの?」
「はい。……あの、王様に何か?」
つい先ほどデュックス王子がこの部屋に飛び込んできたときのことを思い出し、もしかしてと思ったのだ。