My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「全くあいつは……。殿下、もう一度書庫までいいですか?」
部屋の中を振り返り言うアルさん。
「あぁ。構わないが」
すぐにツェリウス王子の声が返ってきてほっとする。
「すみません、お願いします」
「いやいや、こっちこそごめんな。気ぃ使わせちゃって」
「全くだ」
私の後ろからイラついた声。セリーンだ。
「ついでに夕飯はどうするつもりなのかと訊いておけ。どうせこのまま戻らないつもりなのだろうからな」
「ん、そうだな。訊いとく」
苦笑しながら答えたアルさんにセリーンは呆れたように鼻を鳴らした。
と、ちらちらと部屋の中を気にしていたデュックス王子がここで声を上げた。
「兄さま! 兄さまも一緒にどうですか? 庭園で花を摘むんですが」
頬を紅潮させ言ったデュックス王子に、しかしツェリウス王子はゆっくりと首を横に振る。
「僕は他にやることがある。そこの者たちと行っておいで」
「わかりました……」
一気にシュンとなってしまったデュックス王子が可哀想で、私は笑顔で声を掛けた。
「行きましょう、デュックス殿下!」