My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
途中、すれ違う人皆がデュックス王子に頭を下げていく。
王子とフィグラリースさんは当然のことながら慣れている様子でその前を堂々と通り過ぎていくけれど、その後ろを歩く私はどうにも落ち着かなくて終始俯きながら進んだ。
ふと隣を見上げるとセリーンも王子たちと同じく堂々と前を向いて歩いていて、改めて彼女をカッコいいと思った。
そして再び煌びやかな玄関ホールに戻ってきた私たち。
扉の前で王子がくるりとこちらを振り返った。
「フィーはここまでだ。ついて来なくていいからな」
「え!? またですか?」
デュックス王子のつれない一言にほとほと困ったような声を上げるフィグラリースさん。
そのやり取りを見ていてふとツェリウス王子とクラヴィスさんのいつもの会話と重なる。
先ほども似ていると思ったけれど。
(ひょっとして、お兄さんの真似をしてるのかな)
「僕はもうすぐ8歳なんだから庭園くらいお前無しで平気だって言っているだろう! わかったな!」
しぶしぶという顔でフィグラリースさんは王子の前に出て扉を開けていく。
「ですが十分に気をつけてくださいね。殿下はそそっかしいのですから」
「うるさいぞ! 平気だと言っているだろう!」
強く言って宮殿を出ていく王子。
ついさっき見事に転倒したところを見てしまった私はなんだか気まずい思いで扉を支えるフィグラリースさんの前を横切った。と、
「殿下をお願いします」
小さく聞こえたその声に私は慌てて返事をし、セリーンもしっかりと頷いていた。