My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
お昼過ぎの庭園は流石に暑かった。
時折吹きあがる噴水が強い陽の光にキラキラと輝いている。
その水音と庭園の緑が涼しげではあったが、今は宮殿の影がとても有難かった。
そんな中王子は足取り軽く日差しの下に立ち、私たちを振り返った。
「さっきはあっちだったからな。今度はこっちを探すぞ!」
先ほど彼がいた場所とは逆方面をびしっと指差す王子。
「ついて来い!」
「あ、殿下!」
走り出しかけた王子を慌てて引き止める。
お願いしますと言われたのに怪我をさせてしまったら大変だ。何しろ彼は王子様なのだから。
私は彼に駆け寄り笑顔で言う。
「ゆっくり行きましょう。あ、手を繋ぎましょうか」
そうすれば安心と手を差し出すと、王子はびっくりした様子でその手を見た。
その顏を見てすぐにしまったと思う。
(王子様に向かって馴れ馴れしくし過ぎ……!)
「す、すみませ」
「母さま以外の女性と手を繋ぐのは初めてだが、構わないぞ」
王子ははにかむように笑って私の引っ込めかけた手を取ってくれた。
「行こう!」
「は、はい!」
誰にも見られていないといいなと思いつつも、彼の楽しげな横顔にこちらも嬉しくなる。
(やっぱりデュックス殿下は癒しだなぁ~)
それこそ王子様に向かって失礼なことを考えながら、私は彼と一緒に庭園の中を進んだ。