My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
と、少しして宮殿入口の方が俄かに騒がしくなった。
「なんだ?」
両手にいっぱいの花を持って王子が立ち上がる。
「あれは……お医者さま達だ。帰るのか?」
え? と思い私も立ち上がる。
見ると確かに大きな鞄を持った人たちが列を成して城門に向かって進んでいる。
しかしその中にフォルゲンさんたち夫婦の姿は見つけられなかった。
「そういえば、ツェリウス殿下が他の医師たちに帰って良いと言ったのだったな」
王子がセリーンを見上げる。
「兄さまが?」
「あぁ」
「そうか。お前たちがいればもう安心だものな。兄さまが帰ってきてくれて本当に良かった!」
嬉しそうに言ってデュックス王子は再び腰を下ろした。
そんな彼に微笑み言う。
「殿下は本当にツェリウス殿下がお好きなんですね」
すると王子は目をキラキラさせてこちらを見上げた。
「あぁ! 兄さまは格好良いし博識だからな。カノンもそう思うだろう?」
「そ、そうですね」
きっとデュックス王子の知らないツェリウス王子をたくさん見てしまっている私はどうにか笑みを崩さずに答える。