My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「待ってました俺のティコォーー!」
勢いよく扉が開くと共にそんな歓声と飛び切りの笑顔に迎えられた私たち。
一番前にいた彼女が目を丸くしたのは言うまでもなく、セリーンは心底呆れた顔だ。
「あれ、二人も一緒だったのか」
と、前の彼女がクックッと肩を震わせ笑い出した。
「本当にこれが好きなんだねぇ。お待ちどおさま。さ、飲んでおくれ」
「ありがとうございます! いただきます……!」
目をキラキラさせてアルさんはグラスをふたつ手に取り、部屋の中を振り返った。
「殿下、お待ちかねのティコラトールですよ、ティコラトール! 早速いただきましょう!」
すると机に向かっていたツェリウス王子は顔を上げ言った。
「待っていたのはお前だろう。僕はいいからお前がふたつとも飲んで構わないぞ。飲めるのならな」
「マジですか!? 全然いけますって!」
更に声を上ずらせたアルさんにこちらもつい笑みがこぼれてしまう。
と、王子の視線がこちらを向いた。
「レセル、ご苦労だった」
「いえいえ。こんなに喜んでもらえたら作った甲斐もあったってもんですよ」
レセルと呼ばれた彼女はにこやかに笑う。
(レセルさんって言うんだ)
いい人だな、そう思ったときだ。
「そういえば朝からドゥルスの姿を見ないが」
(!?)
王子の口から急に出たその名に驚く。
彼にはまだドゥルスさんと会ったことは話していない。ということは――。
「あぁ、申し訳ありません。今日は丁度お休みをいただいていまして、明朝には登城します」
「そうか」
「うちの人も殿下が戻られたと知ったら喜びますよ」
それを聞いて確信する。
(やっぱり! レセルさんがドゥルスさんの奥さんなんだ!)