My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
私はセリーンと目を合わせる。
「それでは私はこれで。失礼します」
「あぁ。ありがとう」
王子に一礼し振り返ったレセルさんにセリーンが話しかける。
「貴女はここの料理長をされているのか?」
「あぁ、この城の厨房は私が取り仕切っているよ」
誇らしげに答えたレセルさんにセリーンは続ける。
「いや、先ほどの料理、味は然ることながら見た目も実に素晴らしかった」
「そうかい?」
「本当にとっても美味しかったです!」
私も続けて言うと、レセルさんは嬉しそうに笑った。
「それは良かった。夕食も腕によりをかけて作るからね、楽しみにしといておくれ」
「はい!」
と、笑顔で背を向けようとしたレセルさんをセリーンは呼び止める。
「ひとつ頼みがあるのだが」
「え?」
「あとで厨房の中を見させてもらっても良いだろうか。実は料理が趣味でな」
(そっか、ここじゃ話しづらいもんね)
レセルさんに協力してもらうには私たちの素性を明かす必要がある。
セリーンは厨房に行きチャンスを見計らって彼女に事情を話すつもりなのだろう。
「あぁ、構わないよ。いつでもおいで」
「本当か! ありがたい。ではまた後ほど」
「はいよ」
そして、レセルさんは廊下を戻って行った。
「いやぁ楽しみだ。城の厨房を見られる機会などそうはないからな」
「え?」
「ん? あぁ、……勿論ドゥルスの話もするつもりだぞ」
付け加えるように小声で言うセリーン。
料理の方は口実かと思ったが、そうでもないみたいだ。
(美食家、だもんね)
しかしこれでレセルさんが味方になってくれたらとても心強い。