My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「そんな……だって、なんで」
気が動転してうまく言葉が出てこない。
王家の呪いはこの国の王になる人が受け継ぐもののはずで、それがなんでアルさんに……。
かろうじて胸は上下しているものの、表情の消えてしまったその顔からは生気が感じられなくて、ただ恐ろしかった。
「王の治癒をしたせいか」
眉間に深く皴を寄せこちらに歩いてくるセリーンの言葉を聞いてハっとする。
「そういえばアルさん、あの後気分悪そうにしてた……」
治癒の術をかけた直後には倒れかけ、書庫の螺旋階段を上っているときも辛そうに見えた。でもその後はいつも通り元気な様子だったのに。
「ど、どうしよう。――あ、笛!」
王子と目が合う。
彼はすぐに胸元から笛を取り出した。
「だが、これは王家の者にしか……それも愛する者が吹かなければ効果は」
「セリーン!」
思わず振り向き叫んでいた。
彼が――アルさんが愛する相手は、間違いなく彼女だ。
セリーンは瞬間動揺したような目をして、しかしすぐに王子に向け手を差し出した。
「貸してくれ」
その顔は真剣そのものだ。
王子は躊躇う様子なく笛を首から外し、セリーンに手渡した。
「ここを吹けばいいのか?」
「あぁ」
王子が頷くのを見てセリーンは即座に突起を口に含んだ。そして、
ピィーー!
部屋の中に高い笛の音が響き渡った。
(お願い……!)
息を呑み皆でアルさんを見守る。
しかし何の変化も起こらない。