My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
――殺されたくない。それだけならパケム島で暗殺者に狙われているとわかったときと同じだったろう。
でも今王子の瞳には、あの時にはなかった王にならんとする固い意志が感じられた。
流石のクラヴィスさんもそこで口を噤み、ラグとアルさんも口論を止めそんな王子に視線を向けていた。
大切な人が出来ると強くなれると言うけれど、王子にとってはドナの存在がまさにそれではないだろうか。
(ドナ、王子頑張ってるよ)
出来るならば、今すぐに友達に伝えたいと思った。――と、
「あ~も~、わかった!」
急にがしがしと頭を掻きむしり、アルさんが半ばヤケクソ気味な声を上げた。
「アルディートさん?」
不安そうに声を掛けたクラヴィスさんの横を通り過ぎ、アルさんは王子の前に立つ。そして今までとは違う、どこか恭しい態度で言った。
「とりあえず、になっちまいますが。そいつがその書庫にいる間の護衛は俺が引き受けましょう。その後のことはその間にじっくり考えるってことで……どうだ?」
ラグの方を向いてアルさんは続ける。
「その書庫でどこまでの情報が手に入るかもわからねーし。最悪、なーんも見つからねーことだってあり得るわけだろ? そんなんで一生を決めちまうのはどうかと思うし、いつ帰ってくるかもわからないお前をただずーっと待ってるなんて御免だからな」