My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
セリーンはもう一度笛を吹いた。
しかし、やはり額の紋様はそのまま。目も開いてはくれない。
「……だめか」
悔しげに王子。
セリーンも息を吐いて笛を持つ手を下ろした。
「そもそもこれは王家の者のみがかかる呪いのはず。他の者がかかるなどあの書物のどこにも書いてなかった」
(書物……)
王子の言葉に私は拳を握る。
「カノン?」
すくと立ち上がった私をセリーンが不思議そうに見た。
「私、ラグを呼んでくる」
彼なら、アルさんと同じ術士の彼なら、何かわかるかもしれない。
それにラグにとってアルさんは先輩であり、兄のような存在のはず。きっと何とかしようとしてくれるはずだ。
今はもうそれしか思いつかなかった。
「なら私も」
言いかけたセリーンに私は首を振る。
「セリーンはアルさんのそばにいてあげて。笛もまだ完全にダメって決まったわけじゃないし」
王子も何も言わないが一人にはなりたくないはずだ。
ラグを呼んでくれば、クラヴィスさんも王子の元へ戻って来られる。
「しかし」
「すぐに戻ってくるから!」
言って私は駆け出した。
――正直、先ほどの書庫での出来事はまだ胸に引っかかっているけれど、そんなことを言っている場合ではない。
王子の部屋を出て、私はあの書庫のある塔へと走った。