My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
14.複雑な思い
廊下を必死に走る私をすれ違った人たちが皆ぎょっとした顔で見てくる。
でも止まれなかった。
早くしないと、あのままアルさんが目を覚まさない気がして怖かった。
中央階段を下りて中庭の見える回廊に出た。書庫はもうすぐだ。
(えっと、確かここを右だよね!)
そう胸中で確認して回廊を曲がり、
ドン!
「!?」
誰かと思い切りぶつかってしまった。
「――す、すいません!」
数歩下がって顔を上げぎくりとする。
そこにいたのは円筒形の帽子を被った、あの宰相プラーヌスだった。
(なんでよりによって……!)
彼も驚いた様子で私を見下ろしている。
「貴女は、確かデイヴィス先生の。そんなに急いでどうされましたか?」
「い、いえ。ちょっと先生に頼まれて、書庫まで」
そちらの方向を指差し、相当引きつっているだろう笑顔で答える。
……アルさんが倒れたことは言わないほうが良いだろう。
「そうでしたか」
それでも温厚そうな笑みが返ってきてほっとする。
早くこの場を去りたかったが、彼が再び口を開いた。
「それにしてもデイヴィス先生は素晴らしいですな。早速急変した陛下を救ってくださったと聞きましたぞ」