My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
セリーンと王子も大きく息を吐いて、ただラグだけはさも当然という顔でアルさんの手を振り払った。
「ったく、ひっでーなぁ。……お蔭で戻ってこられたけどよ」
「大丈夫なんですか?」
声を掛けると、アルさんは漸く薄目を開けこちらを見上げた。それだけでも酷く億劫そうだ。
「あー、……かっこわりーけど、大丈夫じゃないかも。ちょっと起きれそうにないわ」
それだけ言うとすぐにまた目を閉じてしまった。
気が付いてくれたのは良かったけれど、額の紋様は消えてはない。……まだ安心は出来ないのだ。
と、アルさんはもう一度目を開き、王子に視線を向けた。
「すみません、殿下。しばらくこのまま休ませてもらっていいですか?」
「も、勿論だ。僕のことは気にしなくていい」
それを聞いてアルさんは安堵したのか浅く息を吐きながら目を閉じた。
そのまままた意識を失ってしまうのではと不安になる。
でも彼は目を瞑ったままゆっくりと唇を動かした。
「やー、呪いの力ってすげぇのな。全部呑まれるかと思ったわ」
「呑まれる?」
「呪いの力に呑まれたら終わりってことだ」
私の問いに答えながらラグが立ち上がる。
「終わりって……」
(死ぬってこと?)
改めてぞっと背筋が冷たくなる。
一体どんな感覚なのだろう。想像するのさえも恐ろしかった。
「お前は、いつもこんなのと戦ってんのか」
薄く開いた瞳が、ラグを見上げていた。
そうだ、ラグもその身に呪いを受けている。その隠れた額には今のアルさんと同じように呪いの紋様がある。
彼も呪いを受けて死にそうになった、そう言っていた。
もしその苦しみが今もずっと続いているとしたら――。
「オレとお前のとは違う」
ラグはそう素っ気なく答えると王子に視線を向けた。
「少なくともお前のは、原因も今すぐに解く方法もわかっているんだからな」
ぎくりと王子の顔色が変わる。