My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
“余計なことをするな”
“大人しくしていろ”
今までに何度も聞いたセリフだ。
でも今はどちらも聞きたくなくて。
「無くなったら、困るもんね」
気が付けば、そんな言葉が口を衝いていた。
「今のところは必要なモノだから……」
言いながら王子の手の中にある笛に視線を落とす。
最初から、初めて出逢ったときから、彼にとって私はこの笛と同じ存在で。
だから彼にとっては今更なことなんだろうけれど。――でも、言わずにはいられなかった。
私は勢い良く振り向き、強く彼を睨み上げた。
「ラグにとっては道具でも、私は自分がしたいと思ったことをしたいの! だから黙ってて!」
「お前を道具と思ったことなんて一度もねぇ!!」
一際大きく響いたその声に、私は目を見開く。
私を真っ直ぐに見下ろす彼の青い瞳が、なぜか酷く傷ついているように見えた。
「いちいち離れていこうとしやがって、道具だったらこんなに……っ」
そこで急に彼は我に返ったように瞳を大きくした。その中には同じように驚いた顔の私が映っていて――。