My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「流石はドナの友人だな。まさか母さんを連れてくるなんて言い出すとは思わなかった」
――王子?
無理に笑っているように見えるのは気のせいだろうか。
「色々とすまなかった。いい加減駄々をこねるのはやめにしよう。この笛はこれから王妃に渡しに行く」
「! ……いいんですか?」
「あぁ」
王子はしっかりと頷いてくれた。
これで王様も、そしてアルさんも治るのだ。
それなのに、なんだか素直に喜べない。
(本当に、これでいいの……?)
と、王子はこちらに背を向け不自然なくらいの明るさで言った。
「まぁ出来ることなら、お前たちにも母さんの踊りを見せたかったけれどな。楽器の音に合わせて踊る母さんは本当に綺麗なんだ」
――楽器。
胸の奥が微かに疼いた気がした。
「お前たちは知らないと思うが、ウエウエティルという楽器の音がまた良くってな」
「ウエウエティル!?」
思わず大きな声が出ていた。
王子が驚いたようにこちらを振り向く。
「知っているのか?」
私は口を魚のようにぱくぱくとしてから、自分を落ち着かせるように深呼吸ひとつして言った。
「もしかしたらお母さん、すぐそこに来てるかもしれません!」