My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


「セリーンごめんね、私が言い出したことなのに……」

 王子がクラヴィスさんを部屋に入れ事情を話している傍ら、私はそうセリーンに声を掛けた。
 彼女は柔らかく微笑むと私の頭に手を置いた。

「言っただろう、私の方が適任だと。それにお前が行くとなると、その男もついていくと言い出しかねない」

 視線の先はラグ。
 彼はソファに横たわるアルさんの様子をじっと見下ろしている。
 ここからその表情は見えないが、やはりアルさんのことが心配なのだろう。

「今王子を守れるのはその男だけだからな」

 そう続けた後セリーンはアルさんにも短く視線を送り、再び私に向き直った。

「大丈夫だ。すぐに母君を連れて戻ってくる」
「うん……気を付けてね」

 セリーンが頷くと同時、王子とクラヴィスさんの話も終わったようだ。
 クラヴィスさんは渋々という顔だったけれど、反対する様子は無かった。

(きっと私たち以上に、王子のお母さんへの想いを知ってるはずだもんね)

 と、ツェリウス王子がこちらを振り返った。

「入口まで案内する。すまないがお前も共に来てくれ」

 王子の視線を追っていくと、ラグが不意を突かれたように顔を上げた。

「そこもこれが鍵になっている。だから僕が行かないとならないんだ」

 王子の手には笛が握られていた。
< 147 / 330 >

この作品をシェア

pagetop