My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「セリーンごめんね、私が言い出したことなのに……」
王子がクラヴィスさんを部屋に入れ事情を話している傍ら、私はそうセリーンに声を掛けた。
彼女は柔らかく微笑むと私の頭に手を置いた。
「言っただろう、私の方が適任だと。それにお前が行くとなると、その男もついていくと言い出しかねない」
視線の先はラグ。
彼はソファに横たわるアルさんの様子をじっと見下ろしている。
ここからその表情は見えないが、やはりアルさんのことが心配なのだろう。
「今王子を守れるのはその男だけだからな」
そう続けた後セリーンはアルさんにも短く視線を送り、再び私に向き直った。
「大丈夫だ。すぐに母君を連れて戻ってくる」
「うん……気を付けてね」
セリーンが頷くと同時、王子とクラヴィスさんの話も終わったようだ。
クラヴィスさんは渋々という顔だったけれど、反対する様子は無かった。
(きっと私たち以上に、王子のお母さんへの想いを知ってるはずだもんね)
と、ツェリウス王子がこちらを振り返った。
「入口まで案内する。すまないがお前も共に来てくれ」
王子の視線を追っていくと、ラグが不意を突かれたように顔を上げた。
「そこもこれが鍵になっている。だから僕が行かないとならないんだ」
王子の手には笛が握られていた。