My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
あいつとはラグのことだとすぐにわかった。
先ほどの私たちのやりとりを聞いてのことだろう。
「あ、あれは、私もついあんなこと……」
思い返すと、怒り任せになんて場違いなことを言ってしまったのだろう。
穴があったら入りたい気分でいると、そんな私を見てアルさんは微笑んだ。
「あいつ、多分今すっげーいっぱいいっぱいなんだと思うんだ」
「いっぱいいっぱい、ですか?」
「うん」
アルさんは天井を見上げ、頷いた。
「元々素直な奴でさ、今が無理しすぎなんだよ」
「素直……ラグがですか?」
思わず訊き返すと、アルさんはハハと苦笑した。
「今のあいつ見てたら考えらんないよな。でもホント、素直で優しくてさ、とにかく可愛い奴だったんだ」
昔は可愛かったのにと彼が度々口にする言葉。
あれは冗談などではなく、事実だったということだろうか。
呪いで小さくなった彼の姿を思い浮かべてみても、素直で可愛いらしい彼はやはり想像できなかった。
「俺のせいなんだ」
「え?」
ぽつりと小さく呟かれた台詞は、初め聞き間違えかと思った。
でも彼はそのまま続けた。
「俺が、あいつをあんなふうにしちまったんだ」
その顔は悲しみと自責の念に満ちていた。