My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
アルさんの表情も再び険しいものに変わっていて――。
「あいつが12の頃……丁度、あいつが呪いで小っさくなった姿、あのくらいの頃かな」
12歳。
日本で言えばまだ小学生だ。
ラグが子供の頃から戦地にいたことは知っていたけれど、その歳を聞いて改めて衝撃を受ける。
「戦争がどういうもんなのかまだ良く理解ってなかったあいつに、俺はこの長い戦いを終わらせに行くんだと言った。そうしたらあいつは相当やる気になってな、上に言われるままに術を使い、そして、ひとつの街が消えちまった……」
セリーンから聞いていた話だった。
なのに、そのすぐそばに居たであろう彼の言葉は酷く重く、息苦しいほどに私のみぞおちあたりに圧し掛かった。
「自分のしちまった事の大きさに、小さかったあいつは簡単に押し潰された」
アルさんの声が微かに震える。
「笑うことも、泣くこともなくなっちまったあいつをなんとか元気づけようと、俺も仲間も色々頑張ったんだけどな。中にはあいつの力を恐れて離れていくやつもいて……。あいつはその全てを拒絶して、自分の中に閉じこもった。――そして、ついには自らを殺めようとした」
ドクン、ドクンと頭にまで響いていた心臓の音が、一際大きく鳴り響く。