My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
(大事な……)
また小さく胸が鳴る。
「勿論、道具としてなんかじゃなくってね」
「……っ」
言葉に詰まる。
アルさんには全て見透かされているみたいだ。
私は部屋が暗くて良かったと思いながら、こくりと頷いた。
「――ふぅ、ちと喋り過ぎたかな」
「あ、だ、大丈夫ですか?」
慌てて立ち上がり訊くとアルさんは「え?」 と少し驚いたように私を見た。
「え?」
「あ、ううん、大丈夫。……それより、セリーンはもう城を出ちまったかな」
先ほど皆が出て行った扉の方に視線を向けたアルさんに、私は力強く言う。
「セリーンならきっと、すぐに戻ってきてくれますよ。王子のお母さんと一緒に!」
「ん、そうだな。それにしても、セリーンがあんなに俺のために必死になってくれるなんてなぁ……。ホント、こんなトコでくたばってらんないよな」
苦笑した彼を見て、私はあっと思い出す。
「そうだ、アルさん。セリーンってお花が好きみたいです」
「え?」
「さっきそう言ってて、花束とか贈ってあげたら喜ぶかもしれないですよ」
「そっか。花か……。カノンちゃんありがと。覚えておくよ」
そうして彼はもう一度微笑んだ。