My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


「戻ってきたみたいだ」

 アルさんの言葉に扉の方を見ると確かに足音が聞こえてきた。
 それは目の前で止まり、扉が開いていく。
 暗い部屋の中に淡い光が差し込み、その光の中に立つ王子とラグの表情がさっと強張った。

「なんでこんなに暗いんだ!?」

 そんな王子の驚いた声に、ソファの傍らに座り込んでいた私は慌てて立ち上がる。

「すみません! アルさんが眩しいみたいでカーテン閉めちゃったんです」

 私はもう目が慣れていたけれど、明るい場所から戻った彼らには真っ暗に思えたのだろう。
 ひょっとしたら一瞬私たちが見えなかったのかもしれない。
 目の合ったラグが安堵するのがわかって、先ほどアルさんから言われた台詞が蘇る。

(大事な……)

「眩しい?」

 訝しげな王子の声にハっとして私はラグから視線を外す。

「そうか、あいつもそうだったな。しかしさすがにこれでは……。蝋燭の灯りもきつそうか?」
「そのくらいなら多分大丈夫です。すいません」

 目を閉じたままアルさんが答えると王子は廊下に戻り声を上げた。

「誰か、灯りを持ってきてくれ」

 するとすぐに誰かつかまったのか、彼は改めて部屋に入ってきた。ラグが扉を閉めると再び部屋の中は暗闇に包まれる。

「セリーンは」

 訊くと王子が答えてくれた。

「出発した。入口にクラヴィスを待たせてある」

 だからクラヴィスさんの姿が無いのか、そう思いつつ彼の不服そうな顔が頭に浮かんだ。
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