My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
ぞくと震えが走る。
――王様と同じ症状が出始めているアルさん。
ということは、昼間見た王様と同じように、これからアルさんの身にも更なる異変が起きるのだろうか。
今はセリーンがお母さんを連れて早く戻ってくれることを祈るしかないけれど……。
「随分とはた迷惑な呪いだな。これじゃ本も読めやしねぇ」
ラグが向かいのソファに座りながら言うのを聞いて、そんな言い方しなくてもと口を開きかける。でも、
「全くだ」
王子が溜息交じりに同意して驚く。
彼は蝋燭の上で揺れる小さな炎を睨むように見つめ、言った。
「あの伝説がどこまで事実なのかはわからないが、つくづくはた迷惑な王女だ」
――獣に恋をし、王家を呪いながら死んでいった王女様。
確かにその子孫である王子からしたら迷惑な話だろうけれど……。
と、王子は蝋燭から目を離し私たちの方を向いた。
「そうだ、お前たちの夕食をこちらに持ってくるよう伝えないとな。カノンもここで食べるだろう」
「あ、はい」
答えながらもうそんな時間かと思う。昼食が豪勢だったからだろうか、まだあまりお腹が減っていなかった。
(それにしても……)
王子は普段からこの自室に料理を運んでもらって一人で食事をしていたのだろうか。
お昼もアルさんとこの部屋で食べたようだった。
王族の食事というと、つい大きなテーブルを皆で囲んでいる様子を想像してしまうけれど。
(……王様が倒れる前は、きっとそんなふうに家族皆で食べてたんだよね?)